かんとくのこべや【第8話】

2021年1月21日

イングランド全体がロックダウンとなり2週間が経とうとしています。

まだまだ報告に上がっているコロナウィルス感染者数は多いものの、それでも感染者数グラフは右下に向いています。こうなるといろいろと考えてしますのが、クリスマス前に導入された厳しい行動制限。例えば店内飲食禁止や、違う家の人に行ってはいけないといったものですが、発令後もなおそのグラフが右肩爆上がりだったのは・・・そういうことだったんでしょう。

 

 

さて、今回は僕の【オンライン私生活】について少し触れたいと思います。

オンラインが当たり前に身近にある時代となり、僕も漏れなくオンライン上での情報収集が増え、その時間はロックダウンで確実に増しました。ニュースを見るのもそう、Zoomでサッカー関係の集まりに出席するのもそう。当然のようにYouTubeもよく見ます。

では、僕が一体YouTubeで何を見ていると思いますか?

1、関西人だからどうせお笑いだろうよ!

2、いやいや、サッカーコーチなんだからサッカーのプレー動画に決まっている!!

3、でもコーチだったらプレー動画よりも指導や練習メニューの動画じゃない!?

4、意表をついて、料理番組みてたりして。

5、旅行好きみたいだし、オンライン旅行してそう。笑

 

ズバリ正解は意表をついて4の料理番組です! もちろん他のを見たりもしますが、圧倒的に多いです。

 

でも、キューピー三分間クッキングのようなこれをこうやって作りまーす、という動画ではなく、シェフや店のドキュメンタリーや物語性のある番組です。例えば『パレ・ド・Z~おいしさの未来~』のような番組です。ではなぜその類の番組を好むか。僕が料理好きなのも影響していますが、それ以上に、行うべき仕事の形や向き合う姿勢に共感を覚え、サッカーコーチと似ていると感じたからです。大まかにはなりますが、全体の仕込みや準備、調理といった手順は常に変わらないものの、その中身や質、方法は都度変わっているはずです。

 

例えば、同じ食材でもその味や個性は変わって当たりまえ。時期によってとれるとれないもあり、料理やコースはそれによって組み立てが変わる。そうなると味付けも変わったり、気候や素材によって温度や水分が変わったり。今日、いま目の前にある食材自体の味を引き出す事、その食材達の組み合わせや味付けで、最高の一皿を生み出し、その一皿づづが手を取り合って最高のコースを生み出す。これをただただ繰り返すわけでもなく、常によりよいものを求め、自分に妥協を許さない料理人の方々の物語は、僕の心を刺激してくれます。

 

サッカーの練習に来る子ども達も、同じ子であっても毎回練習の様子は変わります。心身の状態は当人だけではなく、一緒に練習をする子達の状態も練習には左右します。天候もそう、場所もそう、人数もそう。僕たちは毎回の練習に対ししっかり準備をしますが、練習の中で内容や時間を変えることも少なくありません。要は、その日その瞬間の子ども達の状態に合わせて、練習の質を最大化するコーチングを繰り返しているのです。そして一回づつの練習が繋がり、試合という発表の場に繋がっていくのです。料理人の方々が、目の前の食材とそれを楽しみしているお客様に瞬間瞬間で向き合っているようにに、僕達コーチは、目の前の子ども達とその子の未来に瞬間瞬間で向き合っていかなければいけません。それをジャンルは違えど学び感じる一つの場として、オンラインでそのような動画を見ています。

 

 

今日はもう一つ、知人の鮨職人の話を紹介させて下さい。

ここロンドンで、開店程なくして確固たる地位を確立した知人。正直申し上げて、僕レベルだとだいぶ背伸びが必要なお店ではあり、一年以上前に一度訪れたきりです。それでも僕は、今もなお口の中にその時の衝撃が残っています。これ以上語るには僕では役不足で失礼になりますのでこのあたりにしておきますが、このお店も昨年三月末のロックダウンの影響をもろに受けました。

店は当然お休みとなり、再開出来たのは9ヶ月後の昨年12月。この9か月間の苦悩は想像を絶するものだと思います。再開への不安もあった中、知人は再開に向けて変化を恐れずに進みました。それは鮨の命とも言えるシャリを変えること。

鮨はシャリで決まると言うそうですが、それを変えるということは並外れた熱意と技量が無くては出来ません。当然、シャリが変わるということは、仕込みや仕事を変わる事を意味し、料理だけではなく人の動きも全て影響してきます。その思いとして、待ってて下さるお客様の為に同じではいけない、進化をしなくてはいけないという思いがあった時に、一つの出会いがきっかけとなり、背中を押したようです。

 

皆さんは、安定した自分の拠り所にもなる武器のようなものに、変化を加えることが出来ますか?誰だって簡単に変えれるものではありませんし、僕だっていろいろな怖さはあります。ただ、こういった知人の話を聞いたり、現在のコロナウィルスの状況で世界が一変したりする事を経験すると、変化を前向きに出来る人や組織はやっぱり強いのだなと痛感しています。オンラインだから出来ない、仕方ないといった姿勢や思考にならず、オンラインだからこそ出来る事、得れる物に目を向けて、来たる時に備えていきたいと思います。

 

最後に。僕も人間ですので物事の途中で前に進むの辛かったり、止まりたくなったり、なんだったら後ろ向いちゃうこともあります。でも、それに区切りがついた、終わったと言える時には、少しでも一歩でも前に進んだ状態で終わらせてやるという気概でいます。止まることが悪い事ではなく、止まったまま気づいた時には手遅れに・・・なんてことがないように、この局面を乗り越えましょう!

変化は、時代への適応に向けた進化のきっかけと捉えて。

 

 

水野嘉輝

 

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